第3話:重いドアの先

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「ハンカチ、かな」 「ハンカチ、だね」 「どうみてもハンカチだろ」 健のでも坂村さんのでも違う、と言うことは、誰かの落とし物だろうか。 だとしたらこれの落とし主を探すのはかなり困難だろう。僕らは旅船に乗っているんだ。船の乗組員を含めれば、200人はいるだろう。その中から1人?無理だ。僕ら3人だけじゃ見つかりっこない。 やはりここは、船員さんに届けるべきだろう。でも、財布や貴金属類ならともかく、ハンカチの落とし物を届けるなんて、まるで50円を交番に届ける小学生みたいで、なんだか恥ずかしい。 「とりあえず、元の場所に置いとけよ。落とした奴が気付いて取りに来るだろ」 これは健の意見。むぅ、確かに。 「それ、なにか大事なものかも知れないよ。船員さんに届けた方が良いと思うな」 で、コレが坂村さんの意見。 どっちも筋が通っている。どうするべきやら。 「ん~、まぁとりあえず持っておくよ。他の人が間違えて持っていくかもしれないし、明日もう一回ここにきて、落とし主がいれば渡せばいいし、いなかったら船員さんに届ければいい」 なにもハンカチ一枚でそれほど急いだりはしないだろう。 坂村さんも健も、それに賛成してくれた。 「うし、じゃあ次はどこに行く?」 「あ、この船、ゲームセンターが設置されてるんだって!行ってみない?」 「お、いいね。ゲセンなんて久々だよ」 「うし、じゃ、決定!」 こうして、僕らはその甲板を後にした。    
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