第3話:重いドアの先

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「……………」 むくりと体を起こして、頭をボリボリとかく。眠気まなこのまま携帯の待ち受けを開くと、デジタル表記でデカデカと「6:30」と示されていた。 「なんだまだこんな時間か……ぁ……」 確か船が港に到着するのが9時頃。まだ2時間半の余裕がある。僕は二度寝を決め込み、もう一度ふかふかのベッドに体を沈めるが、 「……うっ!」 忘れていた。自分は今船酔いで苦しんでたんだった。上半身のほぼ全ての体重を使ってベッドにダイブしたため、危うく体内の消化物やら消化液やらが口から出てきそうになったのだ。 「二度寝は無理そうだな……」 幸福の時間をあえなく断念。仕方がないのでベッドから起き上がり、軽くふらつきながらも部屋に唯一ある窓のカーテンを開け放つ。 そこには、蒼と白のみが支配する空間が広がっていた。 「おぉぉ……」 思わず声を漏らしてその光景に見入る。 窓からの風景は、全体ほぼ中央にまっすぐしたラインが引かれており、その線から下は深い蒼、上は純白と、さらに蒼と白が混ざり合ったような綺麗な水色。 船がなかなかのスピードで動いている為、雲の位置や形が少しずつ変わっていくのも面白い。この光景を見るだけでも、「来てよかった」と、そして「誘ってよかった」と思えてくる。 それほどまでに、窓の向こうの光景は感慨深いモノだった。 「………よし」 昨日から着っぱなしだったシャツを脱いで新しいのに着替える。下は昨日のうちにジーンズから簡単なジャージに着替えておいたので問題ない。僕はルームキーをポケットに入れ、ドアを開け放った。 昨日健や坂村さんと一緒に歩いた道を思い出す。行き先は甲板。窓の光景をもっと迫力あるとこで見ようと思ったからだ。ついでに言うと、風に当たって少しでも船酔いから楽になりたい。 昨日拾ったハンカチもついでに持ち、僕は朝の船内を、歩き始めた。    
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