第3話:重いドアの先

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自分の部屋からここまで4分弱。客室階段から例の大きなエントランスホールに入り向かって右側の通路を歩く。途中の売店やらゲームセンターなどを通り過ぎ(途中通り過ぎた乗客用室内風呂を見て、僕はようやく昨日シャワーを浴びていない事に気付いた)、ほとんどすれ違う人もいないこの場所。 目の前にはさっきまでの大理石造りの比にもならないような簡素な鉄製の階段と、それに続いて大きく立ちふさがるように備え付けてある頑丈そうな扉がある。 周りに人気はなく、通路の壁には窓も設置されていないため、太陽が上ったというのに不気味な薄暗さと窮屈さが感じられる。船酔いしているのもあってか、あまりここにはいたくないと直感的な感想が僕の頭に浮かんだ。   階段を上がる。カン、カンと鉄製のそれが鳴り、周りに響く。階段を上りきり、外と中の境界を生み出す鈍い色の扉の前へ。   僕は自分の右手をドアノブに置き、反対側の左手をそのやや下めのあたりに添えた。昨日この扉を開けた健から、「うわ、マジこの扉、重、い……」という情報を入手している。僕は健より力もそんなにないわけなんだから、それ相応の覚悟で臨まなければならない。 「ふぅ~~~~……」 深呼吸をして力を溜め、 「……………でっ!」 次のタイミングでノブをひねり、前に押し込む。 「っ……」 なる程、確かに重い。たぶん扉の関節がさび付いているのだろう、ギギギ、と不気味な音を立てながら扉は開いていく。 開いた扉の隙間から、蒼と白が自由に配色された空が見え、隙間からはヒュウヒュウと風が吹く。 重い扉は、ようやく僕の体分くらいのスペースまで開いてくれた。 身を乗り出して、中から、外へ。 「ふぅ―――――……重かっ、た、……」 息をつくのは、つかの間だった。    
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