第3話:重いドアの先

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――船の側面には、ひたすらに波が当たっていた。 ――当たって、はじけて、また当たって、性懲りもなくはじき返されて…… ――側面にはじけた波は衝撃で上に打ち上げられて、無数の雫になって舞い上がる。 ――舞い上がった雫が空中に浮かんでいられるのはたった数秒で、いつかはまた海中に戻り、また波の一部になる。 ――それは、人で言う「再会」と同じ。 ――人はたとえ、互いが別れ離れになっても、巡り巡っていつかは必ず再開を果たす。 ――問題はそれが明日か、数年後か、あるいは死んだ後の世界でかという事だけ。 ――僕、川越 悠輔と言う雫は彼女、樋浦 舞と言う雫と、この甲板と言う海で再開した。 ――そう、今、この瞬間に。    
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