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「あ、あの………」
「ん?」
新任教師の挨拶やクラス全員の自己紹介、その他うんぬんetc.を終え、高校という新天地に対しての緊張がまだ少し収まり切れていないまま帰り支度をしていた僕は、加奈崎さんのか細い声に呼び止められた。
「あぁ、えっと……加奈崎さん……だっけ?」
「あ…は、はい。あの……さっきはありがとうございました」
そう言って丁寧にもヘコと頭を下げる。
加奈崎さんは敬語は、まぁ彼女の性格を思えば初対面なわけだったのだし、自然とそうなってしまったのだろう。
「別に良いよ。今度から気をつけてくれれば。さすがに、毎度毎度は困るけど」 もう少し気のきいた台詞は無いのか、自分のバカが。
僕が心の中で自分自身に毒ついていると、加奈崎さんは少し安心したのだろうか、強ばっていた顔を少しほころばせながら言った。
「そうですね。気をつけます」
加奈崎さんはフフと笑った。そのどこか幼さの残る、でも子供じみてない落ち着いた笑顔に、僕の心はドキッとした。
それからだ。加奈崎さんを意識するようになったのは。
それから、僕と加奈崎さんはよく喋るようになった。話している内に、加奈崎さんが敬語を使わなくなったのも、自分としてはかなり嬉しいものだった。なんとなくだけど、加奈崎さんが前以上に気になるようになった。
これが好意なのかと聞かれると、正直そうなのかは分からない。でも、他の女子より気になるのは確かだ。
だから僕は、このチケットで加奈崎さんを誘って、自分の加奈崎さんへの気持ち、そして加奈崎さんの僕に対する気持ちを確かめたいんだ。
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