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―――それにしても、だ。
これがペアチケットじゃなくてホントに良かった。
ふたりきりの旅なんて加奈崎さんが誘いに乗るはずがない。 もともとおとなしめの性格な訳だし。
それに3枚目のチケットでアイツを誘える。僕の親友の……
「よぅ悠輔。相変わらず変な顔してんな」
……ヤッパリ誘うの止めようかな……
「健、朝からそれはないだろ」
振り向きながら僕は言った。案の定そこには親友、加納 健の姿があった。
すらりとした長身、やや先端がハネた髪型。1番ではなくても、この学校のベスト10くらいには入る美男子だ。いまだに僕の親友であることがたまに信じられなくなる。
「ははっ、気にするな。ホントの事だ」「よけい気にするって」
言い合って僕らは笑った。何でもない日常。気になる女の子がいる。自分よりはるかにかっこいい親友がいる。どこにでもいる普通の学生となんら変わらない生活を僕は送っている。
おそらくはこれから先も、この普通すぎる日常が変わることなんてないだろう。無意識に、そして当然のように、僕は頭のどこかでそう考えていたんだ。
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