騒がしい序章

9/14
前へ
/79ページ
次へ
「……マジ?」 今、俺は心底驚いた顔をしているだろう。 男性恐怖症なんて、漫画とかドラマだけかと思っていたけど、目の前に実物が現れるとは思ってもいなかった。 「じ、じゃあ男の友達とかあまり居ないの?」 「はい……実は今こうやって喋っているだけでも少し怖いんです」 そう言われて俺は初めて気が付いた。 よく桜井の身体を見ていると、震えているのがわかる。 (本当に男がダメなんだな…) さて、どうしたものか…… 男が苦手ってことは今俺と話してるのも辛いよな。 「そっか……なんか悪いな。何にもできなくて」 「い、いえ!私が悪いんです……本当にごめんなさい……」 そう言って桜井は申し訳なさそうに頭を下げる。 そんなことをされても逆に困るので、とりあえず“頭を上げて”としか言えなかった。 「本当にごめんなさい……」 「気にしないでいいって。もしまた話す機会があればその時に話そう」 「は……はい!それじゃ、私は用事があるので…さようなら!」 そう言うと、桜井は駆け足で去って行った。 心なしか、なんとなくその時の桜井の表情は柔らかく、嬉しそうに見えた。 「……やべ、さっさと宿題やらなきゃな」 これが俺と彼女の最初の会話だった…
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加