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「秀太助けて~!」知美が蓮華義治に無理矢理連れていかれている。僕はなぜかもがけども思い通り動けなく、全身が嫌な汗でびっしょりになりやっとの思いで「知美~!」と叫んだところで目が覚めた。
目覚めると横に藤吉が心配そうに座り、僕の顔を覗きこんでいた。「かなりうなされておいででしたが・・・。」と藤吉は言ったので、「いや、大丈夫です。ちょっと嫌な夢を見まして」と答え、藤吉の後ろをみると羽織りと袴が用意されていた。
「今日は斎藤道三様と対面していただきます。斎藤道三様は親方様の義理の父親になります。」と藤吉は言った。
そこで僕は今日、マムシと対面することになっていたことに気付き、改めてなぜそのような人が僕の事を知っているのか不思議に思った。ただ今の状態が何であるのか分かる鍵はそこにあるような気がした。
「では、失礼させていただきます。」と藤吉は言い、手際良く僕を着替えさせ、「では参りましょう、朝餉は道三様とご一緒となります。」と笑顔で言った。僕はまだ出会ったばかりの藤吉の手際良さや顔は良く無いがそれを全て打ち消すぐらいの笑顔に訳もなくなにか肉親に近いものを感じ好印象を持った。
「ではこちらでお待ち下さい。」 と藤吉は言い、戸の脇に膝まづき、戸を開けた。僕は中に入り、向かって左側に座った。藤吉はそれを見て、ニコッと笑い戸を閉めた。部屋は八畳位で何もないこじんまりとしたものだった。暫くするとドタドタと足音が聞こえ、ガラッと戸が開き、50歳位で白髪混じりの大男が入って来て、開口1番「よう!久しぶり!かわらんな。」
と言った。僕は何を言っているのか分からず、マジマジと彼の顔を見て唖然とした。そこには知った顔があったからだった。
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