時空の門

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冬の横浜、関内駅周辺はもう午前12時近いのにまた゛人の行き来がある。山下公園の方から中華街の入口近辺に来た頃、左手側にみたことの無い門が有るのに気付いた・・。 門には「変刻門」と書いてある。 「おい、織田・・・こんな中華街入口あったっけ?」と振り向くと、織田は口を半開きにして、僕の言葉が聞こえていないようだった。「おい!」と僕は強めに言った。織田は「あぁ」と頭を抱えた。「どうした?」と聞くと、織田は「あぁ、なんでもない」と苦り切った顔で答えた。 門には鉄の扉があり、柱にはちょうど胸の高さのあたりに手の形が彫られていた。その手形の上にはみたことの文字が書いてあった。 「選ばれし者、手をあて、善き捌きを行うべし」と織田はつぶやいた。 「へーなんで読めるの?」と聞くと、「まぁ、ちょっとな・・・」と織田はばつが悪そうな顔をした。 僕が手形に手をあてようとすると「ちょっと待て!木下、日本史詳しい?」と織田が聞いてきた。「えっ、なんだよ急に、まあ人並みにはな」と僕が言うと、「じゃ、これをやる。」と織田はバックの中からB5サイズのブリキ缶を取り出し僕に手渡した。ちょっと重かった。「なんだよこれ!」「いいから、お前の想い遂げられるかもしれないぜ!」と織田は真剣な顔で言った。 僕は腑に落ちないながらそのブリキかんをバックにしまった。それをみた織田は決心したように、「じぁ、手をあててみろよ。」と言った。 僕はそんな織田を不信に思いながら恐る恐る手を手形に嵌めてみた。不思議な事にまるで僕の手から型を取ったようにぴったりだった。 ギギッーガッシャン 錆び付いた音をたて門は開いた。 門の中は暗くてなにも見えない・・・。 躊躇している僕の腕を織田は引き、「サア行こう!」と言い、中に入った。 「ちょ、待て!あぁ~」 少し落ちる感覚があり、気がつくと畳みの上だった。 そして、織田の親父さんが白装束で「人生僅か50年~」と能を舞っていた・・・。
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