1563人が本棚に入れています
本棚に追加
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
山崎は会津に残る斎藤らと共に、城下で戦いを繰り広げていた。監察の利を生かし、駆ける。情報収集や伝令には余念がない。
一つ見覚えのある背中に遭遇することとなる。
「え?」
原田左之助である。見張りをしているのか辺りを気にしている。近くに永倉の姿は無かった。こんな街はずれで何をしているのかと気にはなったが、山崎は原田の前にそっと出向いた。
「…山崎か?」黒装束に身を包み顔の半分まで隠れているのに、原田はすぐに山崎を見抜いた。
「お久しぶりです。」
「お前、なんで会津に。」
「新選組は会津戦争に参加しているんや。」顔に覆われた布を取りながら山崎が言う。
「そうか、土方さんならそうするか。」
「原田隊長、頼みがあるんや。」
新撰組に今、土方は居ない。その内情は原田には言わない山崎である。
「俺に?」原田は怪訝な顔である。
「これを永倉隊長に渡してほしい。」それは小さくたたまれた文である。
「新八にか。」
「俺のお節介や。 」山崎はそれだけ言うと、踵を返して歩き出す。
「左之、遅くなった。」永倉と芳賀が戻ってくる。
「どうした…」道の方を凝視していた原田は小さな紙を握っている。それを永倉の手に握らせるのである。
「左之?」訝し気な顔で永倉はその紙を開いた。
走り書きで書かれていたのは高良生存の知らせである。
「……左之、これは。」
「山崎が。」
「山崎が置いていったのか?」原田はぶんぶんと頭を縦に振った。
そこには土方と共に仙台に向かったことが書かれている。
(生きてる…)
嬉しさが込み上げる。新選組を出る時、鉄之助に彼女の事を知らせなくていいと言った。本当の所怖かったのかもしれない。高良の存在が大きすぎて。
「高良は生きてる。」永倉はそれを声に出した。それだけで息苦しさが楽になる気がした。原田も喜びに満ちていた。芳賀だけはなにが起こっているのか分からず、ポカンと2人をみているだけであった。
最初のコメントを投稿しよう!