21.蝦夷五稜郭に散る

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「……おい、青いの。」 「青いの?私の事でしょうか?」 「お前以外にそんな奇特な髪の奴がいるか。」声をかけてきたのは陸軍奉行大鳥圭介である。 「大鳥様、何か御用でしょうか。」 「今回は俺の隊につけ。」 「え…。」 「陸軍の総大将たる俺の隊につけと言っている。お前の化物のような力はそこで役に立つ。先陣を切れ。」大鳥の態度は圧をかけるように強い。一隊士に圧力をかける事が稀なため、周りにいる藩士や隊士達が2人のやり取りを戦支度をしながら盗み見ている。 「化物て…言われずとも分かっております。私は刀を握るしか、能がない事も。」高良の目は睨むように大鳥を見た。 「土方君は本当に有能だ。土方君が育ててきた君らもな。特に犬飼。」高良の腕を掴む。 「……」 「人とは思えないその真剣技、こんな化物じみた力を使わずしてなるか。」 「私は…土方さんの部下です。あの人が大鳥様の手伝いをしろと言うならば、いくらでも戦いましょう。」 「私は土方君の上に立っているんだよ。」腕を掴んでいる手に力が入る。 「ッ痛!!」 「大鳥様。」大鳥の元へやってきたのは土方である。 「土方君。」 「うちの部下が何か無礼を働きましたか。」土方についてきた山崎も一触即発な雰囲気を感じ取って冷や冷やしている。 「いや、犬飼君を私の部隊の前線に欲しいと思い、勧誘していたんだよ。」 「明日の作戦は、犬飼にも私の部隊で働いてもらわなければいけません。」 「…君はいやにこの隊士を傍に置きたがるな。」 「何?」土方が眉をしかめる。 「山崎君達、他の隊士を他藩の隊に編入することはあっても、こんな化物のような力を持った犬飼は絶対に傍から離さないのには、何か理由があるのか。」 高良は松前の作戦の時も必ず土方の指示が届く隊につくようになっていた。 「…土方さん。」高良は控えめに声をあげる。大鳥と土方が高良に目を落とす。 「箱館に総攻撃を仕掛けると言われた今、私の力は全線で役に立ちます。大鳥様の言う通りです。」高良は土方の指示を待つように動かない。 土方さんは蝦夷に来てから高良を前線には立たせなかった。高良も刀を使える戦場に出してほしいとは言ったことはない。それは互いに意図を読み取っていたからだ。
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