イギリスの孤児

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  「ユナ…ハウンド…?」  男が眉を寄せて、聞き覚えがあることに気付く。そしてどうやら思い出したのだろう、驚愕と恐怖がないまぜになった目で、ユナを見た。  意外なことに、この男には記憶力というものがあったらしい。 「あ…『あの』、ハウンド、なのかッ!?孤児のハウンド!」  その顔色が、サッと赤から青へ変化する。一気に汗が吹き出した。 「人の悲境とするところを、恐々と叫ばないでくれる?何、その通り名チックな言い方」 「警察要らずの歩く兵器、一人でマフィアを壊滅させたっていう…ッ!!」 「誰が兵器だ。何がマフィアだ。…ただのギャングにもなれない悪ガキの集まりでしょ、あんなの」  否定のしどころから察するに、何かを壊滅させたのは事実のようだ。  まるで悪魔にでも遭遇したように、男は一歩二歩と後ずさる。最後に「ひぃ」と、情けない声を発すると、仲間を残して一目散に逃げ走った。 「あーあ、置いてったよこの粗大ゴミ」 「どっちにしろ、後でゴミ処理されるでしょ、コイツもあの男も。あいつらがつるんでる、仲間ってやつにね」  倒れた男を足蹴にしてユナが呟くと、傍観していたアリスが答えた。  その腕に抱えられ、マヤは安堵の息を漏らす。 「もう、マヤ!夜出かける時は、ユナを連れてけって言ったじゃない!雑魚程度なら、害虫防止になったのに」 「虫よけスプレーか、あたしは」 「あ、ごめん」 「いや、別に気にしな…」 「殺虫剤レベルだったわね、ユナは。相応の評価は正しく認識しなくちゃ」 「いらないんだけどその評価」  嘘満面の、両者の笑顔。  おかげでマヤは緊張感が解れたが、呆れるやら申し訳ないやらで困惑する。  
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