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彼の地の王国
その悪夢は、突然始まった。
何でもない、ごく平穏な一日だった。
日和もよく、温かい日差しが差し込み、外出するにも気持ちがよくて。
そうして平穏なまま一日が終わる、はずだった。
変化が起きたのは、夕方に差し掛かった時刻。
空模様が変わったと思った直後、暗雲が立ち込め、更には黒い渦が空を覆い始めたのだ。
今まであんなに晴れていたのに。急変が、人々の不安と恐怖を呼び起こす。
「何なんだ…あの渦は…」
「普通じゃないわ」
「あんな雲、見たことねぇぞ」
黒い渦を中心に、暗雲は瞬く間に広がっていった。
そしてついに王都が覆い尽くされた時、不安が驚愕へと変わる。
巨大な火の玉が、岩のような重圧を持って地上へ落下してきたのだ。
轟くような落下音、そして地響き、押し潰された建物や道路。
凄まじい破壊の光景が、人々の前で繰り広げられていく。
「うわあぁぁッ」
「誰かッ!助けて!!」
「火が……っ、早く消火をッ!」
辺り一面、阿鼻叫喚の地獄と化すのはあっという間だった。
老若男女、様々な断末魔と怒号が飛び交う中、空から降り注ぐ火の玉は絶える気配はない。
王都を徹底的に破壊し尽くすかのように、次々と渦から赤い悪魔は降り続ける。
平穏は一変して、闇と煌々と燃える炎で埋めつくされた。
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