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イギリスの孤児
イギリス・ロンドン、コーラン地区。
首都とはいえ、郊外ともなれば冨と退廃が入り交じる混沌とした街だった。
ロンドンは更に地区ごとに別けられ、中でもコーラン地区は貧困層が多く占めていて、あまり治安はよくない。
東の島国ヤマトは五年前に内戦が始まり、脱出組のヤマト人がイギリスにも流れ込んできたのも、昨今の問題となっている。
今や皇族の絶えたこのイギリスでは、陰謀と野望しか頭にない政治家が好き勝手に国を動かしていた。
さらに問題なのが、国家解体とまでに至った大国チャイナ。
未だに王権を固持する彼の国は、多民族の独立運動により、ヤマトよりも深刻な難民流出が発生した。
爆発的な避難民の移住は、友好国に多大な影響を与えたのだ。
「いやっ、離してよ!」
「なぁーんだよ、いいじゃねぇか、少しくらい楽しもうぜ」
「たまにはパァーっと遊ばなくちゃ、なぁ?」
安っぽい濁とした声。
夜ともなれば、数メートル進む度にこの不愉快な呼び声が掛かるという、うんざりするような場所だ。
「誰がアンタたちなんかと!ちょっと、あたしは忙しいんだから!暇な女を探して!」
「暇な女なんて、金が無ねぇのが相場だろぉ~。ヤルだけならともかく、酒も飲ませらんねぇヤツに用はねーんだよ」
「文無しは役立たず、ってなぁ」
強気な声で言い返した少女は、ありったけの嫌悪を込めて男共を睨む。
しかし、それ以上の抵抗が出来ない。強気な態度でごまかしているが、手は汗で湿り恐怖で足が震えそうだった。
目の前にいるのは二人だが、どこかに仲間がたむろしているのだと、彼女は知っていた。
聞きたくもないが、ヤツらの悪行は嫌でも耳に入る。
その、手段も。
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