魂の迷子

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魂の迷子

    「ねぇ、一緒に  ご飯食べない?」 「うん、いいよ。」 同じクラスの女の子に 明るく話しかけられて、 私は笑う。 これが作りモノの 笑顔だって気づいた人は いるのだろうか。 私の内面は いつでも暗くて残酷だ。 …女子特有の 甲高い笑い声が耳につく。 私の暗さとは対照的に 昼休みの教室はいつでも ワイワイと騒がしい。   「…って感じでさ、マジ  有り得なくないっ!?」 「それはナイよーっ!  超ウザいっ!」 キャッキャッと悪口で 騒ぐ女子達の中で、 私はお弁当を食べる。 卵焼きに箸を つけたところで 声をかけられ 顔をあげる。   「みんなも  そう思うよねっ」   女子というのは めんどくさい生き物だ。 妙に団結したがるし、 それに反抗すれば 余所者として扱われ グループに 入れてもらえない。 だが、扱い方を 覚えてしまえば あとは『慣れ』だ。   「うん、それは  ヒドいよねぇ」   周りの子と同じように ちょっと表情を変える。 すると話しかけてきた 女子は満足げに 悲劇のヒロインぶって また話し始める。     目立たず 騒がず 大人しく 空気を読んで行動する。 これが私の モットーである。 女の子らしく 礼儀正しくしていれば 親にも先生にも 誉めてもらえるし、 適度に周りに 流されていれば 友達も簡単にできた。 …目立てば 虐められるかもしれない。 …騒げは大人に嫌われる。  『大人しくしていれば』 心も個性も感情も  全て押し殺して 隠してしまえばいい。   それが高校生になった 私が手に入れた 最高の世渡りの術だ。  それが最善だと思い それを貫いてきた。           …それなのに         闇の世界で 赤い薔薇が散った   深紅の花びらが 風もないのに宙を舞う         此処ハ何処?      
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