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ぼくはひとり
ずっとひとり
君に逢うまでは
ずっとひとりだったんだ
寒い寒い冬の夜
赤い服のおじいさんがやってきて ぼくを君の家に連れていった
眠る君の傍にぼくを置いて 月明かりに消えていった不思議なおじいさんだった
翌朝ぼくを見つけた君は 小さな身体にぼくを抱えて 急いでおとうさんおかあさんにぼくがやってきたことを告げた
おとうさんとおかあさんはニッコリ笑って
「良かったね」
って言っていた
ぼくはよく分からないままだったけど…
みんなの笑った顔を見ていたら ぼくもなんだか幸せな気持ちになった
いつも一緒にいたね
いつもぼくとお話をしてくれたね
毎日 ぼくと一緒に眠ったね
いつもおんなじ毎日が ぼくにはとても幸せ
………
君は大きくなって ぼくは部屋の隅っこへ
ちょっと寂しいけど
日に日に成長していく君を見て
ぼくはとても幸せ
ある日ぼくは君に連れられて どこかにぼくを置いてった
いろんな物に混ぜられて ちょっと息が苦しいよ
君をしばらく待ってたら 知らない誰かがやってきた
急に目の前が暗くなって 気がついたら周りはゴミだらけ
そっか
ぼく分かったよ
ちょっと痛いけど
ちょっと寂しいけど
もう少しでやっと
笑ったり 泣いたり 怒ったり
君に伝えられるようになるんだね
君との日々を考えていたら、とても幸せな気持ちになったよ
この悪い夢から覚めたら
きっとぼくは もっと幸せになるよ
だから
あのおじいさんにお願いするんだ
人間になりたい って……
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