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親父の電話を受け学校が休みの日に部活を休んで母親のお見舞いに行った。部屋は相部屋で本人も元気そうに僕を迎えてくれた。少し小太り分厚いメガネがトレードマークの女、僕の母親の恵子だ。
恵子「お前、今日部活は?」
慶太「今日は休み。」
僕は嘘をついた。
恵子「私は大丈夫なんだから部活休んでまで来なくてもいいんだからね。」
慶太「休みだっていってんじゃん!」
母親には息子の嘘がわかるらしい。
慶太「肩揉んでやるよ。部活で世話んなってる接骨院の先生に習ったから。」
僕は習ってもいないマッサージを嘘をつき、精一杯の勇気で照れくささを噛み殺して母親に言った。
恵子「友達と一緒だと思って強くしないでよ。」
その言葉を聞き終わる前に僕は母親の肩に手をかけていた。
恵子「具合いええわ。」
方言じみた言葉で感謝を伝えられ僕はものすごく嬉しかった。数分もたたないうちにもう大丈夫と言われ僕は手を止めた。
慶太「そろそろ行くわ。」
恵子「そうかい。退院したらまたアパート行くからね。」
慶太「うん。」
僕は最後に「元気だしてね。」の一言を言いたかったがどうしても言えないまま病室を出てしまった。
2週間がたち、母親が退院した。母親から電話があり今度の日曜日にアパートに掃除に来るとのこと。
そんなことしなくていいのに…。
ピンポーン。
アパートの呼び鈴が鳴り母親が部屋に入ってきた。
慶太「何時頃帰るの?」
来てもらって早々僕は心ない一言を母親に言った。
恵子「掃除したら帰るよ!こんな汚くして!!」
そう言うとすぐに掃除し始めた。
この時僕はもう本当に帰ってもらいたくて仕方がなかったのを覚えている。母親が掃除している間もわざとらしいため息をついては「何時に帰るの?」を続けざまに浴びせていた。
しかし母親は怒ることもせずに「そんなに嫌がらないでもいいじゃない。掃除したら帰るから。」と笑いながら言ってくる。それがまたムカついた。
恵子「こんなもんかね。じゃ、帰るけど食べるもんはちゃんと食べるんだよ!」
慶太「わかったわかった。」
そんなこと言われなくても腹減ったら食うよ…。 母親の後を玄関までついていき出るさますぐに鍵をかけた。
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