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病院に着き看護婦さんに案内され病室に入った。そこには親父、おばさん(親父の妹)、一番上の兄、そしてベッドに座っている母親がいた。
恵子「お前も学校抜けて来たのかい?まったく大丈夫だって言ってるのに…。」
いつもの母親がいて安心した。
しばらくみんなで何気ない話をした。昔、家族全員で暮らしていた頃を思い出す。
途中、何回もこの母親が死ぬはずないと思っていた。
親父「ちょっといいか?」
突然、僕と兄が呼ばれ病室を出た。
親父「お母さんな…、ああやって元気そうなんだけど末期癌なんだよ…。俺もここまで進行するとは思ってなかった。」
暗い顔をしてそう言った。
兄も暗い顔をする。
しかし、僕は「何言ってんだこの親父。」と心の中で思った。確かに癌は恐ろしい病気だということは知っているつもりだ。だけどあの母親が死ぬなんてどうしても思えなかった。
それをあたかももうすぐ死ぬというようなことを言う親父に少し腹がたった。
それからしばらく病室と休憩室を行ったり来たりしながら時間が過ぎる。平日だというのに親戚の人たちが集まってくる。また少ししたら退院するはずの母親のために…。
面会時間が過ぎようとしてる頃母親がお腹が痛いと言い始めた。親父が背中をさすっている。しかし、母親のお腹の痛みはおさまらない。
担当の先生を呼んだ。
先生「痛みを和らげるために麻酔を少し入れましょう。」
親父「お願いします。」
母親の痛々しい点滴の後がある腕にまたひとつ点滴の針がつけられた。
しばらくして、母親のお腹の痛みが収まった。
親父「大丈夫か?」
恵子「もう大丈夫。もう遅いから帰っても大丈夫だよ。みんなにもかえってもらって。」
そのことを親戚の人達に伝え帰ってもらった。
それからまた一時間くらい家族で話をした。といっても僕は反抗期真っ只中であまり話していなかったが。
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