5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねーねー!
さっき千瀬からメール来たんだけど!」
風が抜けていく音と、メットという振動を遮る物体に負けないように大声で美咲さんは言う。
「千瀬さんがなんだって?」
「瑛二君をどっかで見た事あるって言うの!」
「見た事あってもおかしくないよ?
3年前までこの街で瑛二を知らない人なんていなかったもん!」
だって瑛二、超が付くほど有名人だったし。
スポーツ推薦で進学したバスケで有名な高校で、瑛二は一年生ながら三年生に混ざってベンチ入り。
三年生が引退すると、二年生を押しのけてレギュラーをもぎ取った。
それはひとえに瑛二の努力と才能だろう。
飽くなき向上心と、生まれもった身体能力。
瑛二は誰よりも高く飛んだ。
誰よりも早く動けた。
まるで燕だ。
軽やかに舞っているようだった。
いつもしていた白い長いサポーターの印象もあってか、いつしか『白燕ーHAKUENー』と呼ばれるようになる。
それを良しとしない者もいる。
大した努力もしないのに、一学年下がレギュラーになるのが許せなかった器の小さな男達。
練習帰り、夜道で瑛二は襲われた。
それこそ燕のように舞い、避けては殴り、流しては蹴り。
8人いた男達は、残り2人になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!