渾名ーAdanaー

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ビビって無防備に突っ込んできた男の顔に瑛二の蹴りが入る。 気を失ったのであろう、白目を向いた男はそのまま瑛二に体を預けた。 相手が気を失った事で一瞬緩んだ瑛二の気。 預けられた体重に負け、後ろに倒れてしまう。 腹の上に頭を乗せ、動かない男。 ニヤリと笑いながら走ってくる男。 持っていたナイフで、瑛二の右足の太股をえぐる。 それに耐えて声を漏らさない瑛二。 そこで「やめてください」「すいませんでした」そんな事を言えば止めてもらえたかもしれない。 それは瑛二のプライドが許さない。 怒りに任せ、ナイフを持った男は振り下げる。 それから逃れようとする瑛二は痛む右足を持ち上げた。 バチィィィィン… あまりの音の大きさに、気を失って瑛二にのし掛かっていた男も目を覚ました。 「うがぁぁあぁあぁぁ!」 アキレス腱が切れ、全身を駆け回る激痛にのた打ちまわる瑛二を見て、自分がした事の重大性に気づいた男は、慌てて逃げ出した。 そして、燕は飛べなくなった。 いや、飛ぼうとはしなかった。 根気よく治療して、リハビリをすれば飛べたんだ。 燕はそれを拒んだ。
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