プロローグ 自己紹介がわりに回想――元真面目少年でした。

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勉強と本が友達。 この言葉は9才の時の俺の口癖だ。 うわー、コイツ友達が少なくて暗そうと思うそこのお前!! うん、あながち間違っていないと思う。 あのときの俺は客観的な人間の目から見ても、根暗な真面目少年に映っていたことだろう。 まぁ、たしかに当時は友達と遊ぶよりも、勉強や本を読んでいたほうが自分の為になると思っていたし、教育熱心な母親の喜ぶ顔がみたくて勉強をしていた。 両親からも「すえは学者か大臣か」と一昔前の親たちが言っていた言葉をテストで百点を取るたびに聞いていたんだ。 このまま、学者を目指そうかと思っていた誕生日の過ぎた10才のある日、ひとりの少女が俺のクラスに転校生してきたんだ。 黒板の前で自己紹介を終えた少女は、黙々と本を夢中で読んでいた俺に近付いて言った。 「アナタ、わたしの家来になりなさい」 口の端を吊り上げて不敵に笑う少女と出会ったことで、俺の人生が変わってしまったんだ。それはまるで緩やかな流れの小川に台風が接近した影響で水かさが増えて起きた濁流のように。 そう、彼女は俺の人生を180度変えた台風だった。
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