その男、最悪

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「や、やめっ! ――ぐふぁえ!!? いったい俺がな、なにを――!!どぶふぅ!!」 「うるさいっ!! 貴様が賞金首だという事はすでに解っている!」  ユーリィの繰り出す打撃は弱まる所かどんどんと強くなっていく。 「賞金首だっ――ぐふぅ!だったの、は――ひぎぃ!!賞金首だったのは二年前までだ!! ――ぐらぼらしゃ!!」 「そうだ!! お前が賞金首だったのは二年前までだっ!! ……え?」  ユーリィはぴたりと大剣を振るう手を止めた。 「賞金首だったのは……二年前ま……で?」  騒ぎを聞き付けた野次馬達が作った輪の中心でユーリィは、ぼろきれになったリオンを見ながら、いつまでもその言葉の意味を理解出来ないでいた。    ※ 「全く!! 賞金稼ぎなら賞金首の情報くらいちゃんとしろよ!!」 「いや……返す言葉もない」  真っ白なシーツが敷かれたベッドの上に寝ているリオンは頭の上から足の先まで包帯でぐるぐる巻きの、何とも滑稽な姿で診療所の椅子でしゅん、としているユーリィに睨みを利かせた。  リオンの話によると、自分は確かにS級賞金首のリオン・ストラウスで間違いないが、それは二年前までの事で、ガルバニア大統領の恩赦を受けた今ではただの一般人であるという。 「すまない。賞金首を追って街から街のその日暮らしで、どうも情報には疎くて……」 「言い訳すんなっ!!」 「うっ……」 「賞金稼ぎが”何の罪もない一般人”を凶器で殴打なんて、指名手配モンだっつーの」  二年前まで賞金首だった男にそんな事は言われたくはなかったが、ユーリィは頭を下げて聞くしかなかった。  実際そうなのだから。
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