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その少女は可憐であった。
顔は戦の女神を思わせるように気高く、美しく。
ほんのりと桜色に染まり、わずかにウェーブのかかった長髪はその魅力をさらに際立たせている。
少女の体は希代の数学者でさえ、求め切れないであろう神秘の曲線を、一切の汚れを知らない肌が象っていた。
その美しさは身に纏っていたものが少女には似つかわしくない薄暗いダークグレーのコートや、スカートでも微塵も薄れる事がない程だった。
無作法にも、扉を蹴り飛ばして現れたその可憐な少女は、建物の中にいた数人の男を鋭い瞳で見定めていく。
その建物は大分前に建てられたものらしく、所々に木の傷みが目立ち、男達が発しているのか、淀んだ空気が充満しており、中にいるだけで胸が悪くなってくる。
カウンターの他に点々と置いてあるテーブルに座り、酒を飲みながら談笑していた数名の男が座っており、少女の突然の登場に目を見開いて驚き、次には少女の魅力に意識を奪われていた。
しかし、すぐに少女を敵と見なし、各々がそれぞれの戦闘態勢をとる。
「待ちな」
濁った声が建物に響いた。
奥の扉が開き、その声の主が姿を現す。 普通の男の何人分になるだろうかという巨体を揺らしながらやってきたその巨漢は、少女を見て、目をいやらしく歪めた。
「おいおい。こんなちっちゃい嬢ちゃんがここに何の用だい?」
下卑た笑いを響かせる男に少女は一切ひるむ事なく、凜とした声で言い放った。
「D級賞金首、コッフェル盗賊団、団長、ウリナ・コッフェルだな?」
少女の言葉にウリナは片眉を上げ、怪訝そうな表情を見せる。
「……まさかオメェ賞金稼ぎか?」
「そうだ」
少女がそう言ってのけると、途端に男達が笑い始めた。
この自分の半分も生きてないような少女が賞金稼ぎだとは盗賊団の一味でなくとも、とても信じられないだろう。
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