その男、最悪

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   ※  街の大通りだと言うのに行き交う人の数は少ない。  数年前ではこの大通りも活気があったのだが、戦争により街を支えていた若者は徴兵されてしまい、その多くは街に帰ってくる事なくその魂を戦場で散らした。  そのためこのリオールの街には淋しげな雰囲気が漂っており、街の人々もどこか疲れているように見える。 「たったの2200ベルか……」  先程突き出した盗賊団の報奨金をため息まじりで肩からかけている鞄へと仕舞っている少女の名はユーリィ・クライスト。  最近、その実力を認められつつある賞金稼ぎである。 「これじゃ、仕送りどころじゃないな」  自分の言葉についついため息をついてしまう。  ユーリィが賞金稼ぎになったのは、何も剣の腕を試したかったからではない。単にお金が必要だったからだ。  しかし、なったはいいが、想像してたより賞金稼ぎは稼ぎが悪いのだ。  今や、大抵の賞金首は”ギルド”の方に依頼され、ユーリィのようなフリーの賞金稼ぎはギルドが相手にしないような小物を狩るしかない。  コッフェル盗賊団にしても、盗賊団とは名ばかりのケチな空き巣狙いだ。  そんな連中を相手にしている今の自分にまたまたため息が出てしまうユーリィであった。 「やはり、ギルドに依頼されるよりも先に大物を見つけないとな……」  ユーリィは鞄から真っ黒な装飾の分厚い本を取り出した。  この本はガルバニア政府がユーリィのような賞金稼ぎに無料で支給している手配書だ。  黒い革表紙の中には懸賞金の額や罪状、危険度の高さを表す階級など、賞金首の情報が顔写真と共に載っている。  ギルドに属していない者の多くはこの手配書を見て、賞金首の情報を得る。
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