その男、最悪

5/19
前へ
/21ページ
次へ
(そういえば……そろそろ新しい手配書を貰わないとな)  三年前、賞金稼ぎになった時に貰った手配書をユーリィはぱらぱらとめくり始めた。  ページをめくるにつれ、E級、D級、C級……と手配者の危険度を表す等級が高くなっていく。  突然、ユーリィの手が止まった。  手が止まったのは”S級”賞金首の情報が載っているページだった。  S級賞金首――それは国ではもはや手に負えない究極の無法者達である。  その誰もが伝説的な風評や、超絶的な実力を有しており、並の賞金稼ぎでは目の前に立つ事も許されない。  もちろん報奨金はそれに見合った額が懸けられていて、それは国一つ楽に買える程である。  手配書の写真からも恐ろしい威圧感を発せられている。それが彼女の手を止めたのだ。  ユーリィは何の気無しにS級賞金首達に懸けられている懸賞金の0の数を数えてみた。 「……これぐらいあれば、借金も返せるし、昔の暮らしに戻れる。いや、昔より――」  だが、それが現実味のない話だという事をユーリィは重々承知していた。  いくら剣の腕が立つとはいえ、S級賞金首と闘えるまでとは言えない。  彼らは伝説の中に生きる生き物だ。次元が違う。自分ではせいぜいB級が精一杯だろう。  何だか落ち込む事ばかり考えてしまうな、とユーリィが本を閉じようとした時、彼女の背中を衝撃が襲った。 「痛っ!!」 「うわっ!!」  そこまで強い衝撃ではない事もあったが、ユーリィは何とか踏ん張り、倒れずにすんだ。しかし、持っていた手配書は前方へと投げ出されてしまった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加