その男、最悪

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「大丈夫か? 悪い、急いでてな」  ユーリィが声のした方に振り向くと、そこには一人の少年がユーリィに心配の眼差しを向けて立っていた。  程よく伸びた銀色の髪に透き通った翡翠の瞳。そしてユーリィとは対象的な白いコートがやけに目立つ少年だった。 「大丈夫か?」 「あ、あぁ……。大丈夫だ。怪我もない」  その言葉を聞いた途端、少年は安堵の表情を見せる。 「そうか。それならよかった。ちょっと急いでてな、悪いけどこれで……ん?」  何か見つけたらしい少年はユーリィから目を離し、彼女を追い越してその発見したものに近づいていく。 「これ、あんたのだろ?」  少年はユーリィが先程ぶつかった際に放り出してしまった手配書を差し出した。  開いてあるのはS級賞金首のページ。まず、自分ので間違いないだろう。 「え? あぁ。すまな――」  ユーリィは手配書を自分のだと確認し、受け取ろうとしてある事に気付いた。 (いや……まさか!? そんなはずないだろう!?)  ユーリィは脂汗を流しながら何度も少年と手配書を見比べた。 (似ている……)  驚くべき事に少年がユーリィに差し出している手配書の開かれているページに載っている賞金首と少年の顔がそっくりなのだ。  いや、似ているというレベルでは済まされない。  瞳の色、髪の長さ、着ている物以外、賞金首の写真と少年は全く一緒なのである。  さらに驚くべきは少年がうりふたつの賞金首である。  賞金首の名はリオン・ストラウス。事もあろうに”S級”の賞金首だ。 (こんなところにS級賞金首が……!?)
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