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(…んっ………んん?………あれ?)
目が覚め、暫く状況がつかめず私はぼーっと上を見ていた。
目に入ってくるのは、赤い空
他に邪魔するものはない、空だけが私の目の前に広がっている。
(………眠ってしまったのか…)
身体の色々な部分も夢から覚め重みを取り戻していく。
まだ寝たりなくて、仰向けから横向きに態勢を変えると身体から何かが落ちる感覚が有った。
身体にかけてあった軽い何か
(…ん?)
私はゆっくりと身体を起こし、それを手に取った。
見覚えがある女性もののカーディガン
薄い黄色のカーディガンが夕焼けのせいか、薄いオレンジ色に見えた。
(…来たのか)
条件反射か嬉しい気持ちが湧いてきたが、取って代わるように苛立ちが込み上げ私は親切心からかけてくれたのだろうそのカーディガンを乱暴に放り投げた。
…放り投げたが、1分もしない内に私はそれを拾い上げほこりを払いのける。
(何やってるんだか…)
自分に自分で呆れてしまう。
自分をこっぴどく振った相手の物だというのに…
しかも、結婚式に出てくれなんていう自分勝手な
『貴男に祝福されて結婚したいの私。』
あぁ…身勝手極まりない…
《ジリリリリ…ジリリリリ…》
タイミングが良いのか悪いのか携帯が鳴り着信を確認すると彼女からだった。
「…はい。」
『もしもし…あの…』
「カーディガンありがと。おかげで風邪引かなくてすんだよ。」
『あ…うん。それでね。』
「式ならちゃんと出席させてもらうよ。」
『その事なんだけど、私…自分の事しか考えてなくて…ごめんね本当に…無理しなくて』
(あぁ…本当に…)
「無理なんてしてないよ……うん……うん………それじゃ、カーディガン叔母さんに返しとくから…うん、じゃ。」
《プッ……ツ----…ツ----…》
携帯を切り私はフェンスまで歩いていき夕焼けを背にフェンスに寄りかかった。
(本当に何をしているんだろ私は…)
あぁ…分かっているさ、こんなバカな事をしようとする理由なんて1つだけだ
見栄とか意地とかプライドとか
そんなのも全部全部……
好きなんだ…
好きだからさ…
自分に反吐が出る
目の前が歪む
立っていられなくてしゃがみこめば、影だけは昼間立っているときみたいに長く伸びていた。
まるで立てと言わんばかりに
夕焼けが私の影を伸ばしていた。
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