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小さい頃大事にしていた○○のぬいぐるみ。
寝るのも起きるのも何処へ行くのにもいつも一緒。
あんなに大事にしてたのに
ぼろぼろになったからって…勝手に捨てられた。
悲しくて…悲しくて…
泣きじゃくる私に与えられたのは新しいおもちゃ
最初は拒絶していたけど
数日後…私はその新しいおもちゃで遊んでいた。
あんなに大好きだったのに
もしかしたら、私の気持ちはこのわたぼうしみたいに、息を吹き掛ければ飛んでいって行ってしまうほど
軽いものだったのかもしれない。
白いわたぼうしが宙を舞う。
ふわふわ…ふわふわ…と…
「何してるの?」
聞き覚えのある声に、私は振り向かずに応える。
「…何してるように見える?」
私の問いに、彼は少し間を置いてから
「…俺から逃げてるように見える。」
苦笑いしながら言った。
(…『逃げてる』?私が?)
「ちゃんと…話さないといけない事、沢山あると思うんだけど?」
(『話さないといけない事』?)
「『話さないといけない事』なんてあったっけ?」
(だって、君はもう決めてるんでしょ?)
自分の夢を叶える為に…
「すねてる?」
機嫌を伺う様に聞いてくる彼に私はいつもと同じ口調で
「すねてないわよ。」
そう言って私より頭一つ分高い彼を見上げると、彼は珍しく不安げな表情を隠さないでいる。
いつも堂々と明るくて
私の事を何でも分かっていると自負している彼が…
不安げな瞳で私を見ている。
「何…考えてる?」
『お前の事なら何でもお見通しだよ。』なんていつも言ってるくせに…
「君の事。」
クスッと笑いそう答える。
「…俺?」
「うん。……もう少し詳しく言うと君に対する私の気持ちについてかな?」
私は多分…彼の事が本気で好きだ。
初めての本気の恋…
でも…
「いってらっしゃい。お土産げ楽しみにしてる。」
離れてしまったらどうなるか分からない。
それでも好きでいられるだろうか?
好きでいてくれるだろうか?
「私も負けないように頑張る。」
そして私にも叶えたい夢がある。
だから、彼の気持ちが分かる。
なんていうのは建前で、彼が言うように私は彼から…
自分からも
逃げてるのかもしれない。
「応援してる。」
そう笑って言う私の前方高くわたぼうしが舞い上がっていった。
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