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同性の泣き顔を見たいと思った事はあるだろうか?
俺にはある…というか…
『…泣いてる顔が見てみたい…つーか、なんか泣かしたい。』
なんであんな事言ったのか分からない。しばらくダチの間でドSだとかサドと言われてからかわれた。
はぁ~あ、なんとも懐かしい思い出だ。
何でこんな事を思い出すかというと
「…あっ。」
(マジで来た…呼び出したの向こうだし、来るのは当たり前だけど…)
奴はオレを見つけると嬉しそうに駆け寄ってくる。
「来てくれてありがとう。久しぶり、元気だった?」
「…おぅ、久しぶり…あれ?」
「ん?何?」
「なんか雰囲気変わってね?」
(高校の時はもっと…)
「そうかな?まぁ、色々あったからね。」
(まぁ…いいか)
「そうなんだ。で、来たばっかでなんだけど俺に用って何?」
「用っていうか、報告したい事があって…電話でも良かったんだけど、ちゃんと話したいなって…ほら、俺君の事…その…」
「避けてた?」
「…うん。」
奴は気まずそうにうなずいた。俺達が仲良かったのは高一の半ば迄、三年間クラスは一緒だったけど俺があんな事言ってから、奴はそれとなく俺を避けるようになった。
だからこそ、電話がかかってきた時は驚いた。
「…俺も身に覚えあるし、男に言う台詞じゃないよな?『泣かせたい』なんて。」
嫌いであんな事を言った訳じゃない。奴は良い奴で、誰にでも優しくて、誰にでも平等で、誰にでも…
(…あっ…そうか…)
「えっ?そういう意味だったの?君、そっち系の人?」
「ざけんな!俺はノーマルだ。」
「だよね。良かった…あのさ、一つ聞いていい?何で俺にあんな事…」
「言ったか?そう思ったからそう言ったんだろ?今気付いたけど俺、お前の誰でも同じって感じが気に入らなかったつーか嫌だったんだよ。別にお前の事が嫌いだった訳じゃねーんだけど。」
こんな言いたい放題言われたのに、奴は笑う。
「今でも俺の事泣かせたいって思う?」
(今?)
「いや、なんか楽しそうだし、別に。」
「はは、君って変わってるよね。そんな君だから自分の口からちゃんと…言いたかった。俺、結婚するんだ。」
「へっ?そりゃ、おめでとう。」
その後、俺達は今まで話せなかった分を取り戻すように昔話に花を咲かせた。
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