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「いいですよ。むしろお願いします。」
後ろがとっても気になるが、別に来島は関係ない。ないったらない。
「んじゃ、着替えてくるから正門で待っててね。」
それだけ言うと、私の横を通って行ってしまった。
「シオ! チャンスよ! あの先輩をゲットするチャンス!」
チシが何か騒いでいたが、私の耳には届いていなかった。
ただ、来島の反応を見たかった。
ゆっくりと振り返ると、来島はやっぱり笑っていた。
「あー、うん。すっごく女々しくなるけど、言うね。」
そう、前置きしてから、来島は笑顔を消した真剣な顔で言った。
「行くな。」
驚いた。怯えた、のかも。
目の奥、躰の内、人にはない部分だろうか。
そこに確かにいる、悪魔と呼ばれる根元。黒く渦巻く何か。
そこが怖かった。
私は逃げるように、来島の横を通って門に向かった。
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