30人が本棚に入れています
本棚に追加
「お待たせ。じゃあ行こうか。」
テニスのラケットが入っているように思われる大きな鞄を持って、諦先輩は爽やかに笑った。
ぐっはぁ目の保養。
そして、二人で並んで帰路につく。私は電車で、先輩は自転車だった。
「潮那ってさ、よくかわいいって言われたりしない?」
「えぇ!? し、しませんよ!」
「えー、こんなにかわいいのに?」
赤面した。
そんな他愛もないような会話を……いや他愛はあるのか?……まあいい、とにかく、駅の近くまで来ていた。
「あ、私、電車ですからそろそろ……」
「ねえ潮那。」
私の言葉を遮った先輩の声は、耳のすぐ近くで聞こえた。
顔を向けると、端正な顔が目の前にあった。
「キスしていい?」
突然の申し出に、私は何も言えなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!