片想い、来島暁

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お弁当はもらっていなかった。 こんなに気まずい中でもらえると思えるほどふてぶてしくないから、おにぎりを買った。 そして、放課後。 下駄箱で靴を変えると、濃い青の傘を広げた。チシはバイトだからと先に帰りやがった。 曇天の影がかかる足を見ながら、来島のことを考えていた。 「あの人みたいに、強くないから。って」 同じ言葉を言えば気持ちがわかるかな、と思ったことは誰にも言わない。 気まずくて何が悪い。最初から、来島と仲良くなんてなかった。 それどころか、邪魔だったはずなのに。 「……はあ」 顔を上げて土間を出ると、一人の男が目に入った。 「あ」 「え? あ」 来島暁が立っていた。 .
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