片想い、来島暁

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「……何してんのよ」 このまま無視をするのも可哀想だったので、話しかけてみた。 「えっと……傘忘れたから、どうしようかなって、うん」 鞄を抱いているところを見ると、走って帰ろうとしていたらしい。 傘を傾けた。これは気まぐれ以外の何物でもない。 「入ってく?」 私は優しいから少しくらい入れてあげてもいいわよ。 って言おうとしたら失敗した。 来島は、かなり驚いた顔をしてから、おずおずと聞いてきた。 「いいの?」 「いいわよ。これで無視して、あんたが風邪とかひいてみなさい。私が最低じゃない。」 言い訳臭くなったけど、来島はよってきて傘を持った。 「持つ」 こういう時だけそういうことするのは卑怯だ。 .
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