片想い、来島暁

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「俺にはできない。全部抑えて、絶対出さないで、気付かれないようにするので精一杯だから。」 来島は、自嘲するように笑った。その顔があまりに人間臭かった。 「俺はあの人みたいに強くないから。」 はい、と傘を渡された。気付いたら、もう駅が見えていた。 「変な話してごめん」 聞いたのは私なのに、来島はやっぱり謝った。 だから、私は来島の目を見た。その奥の蛇に、ケンカを売るように。 「でも、それが来島のやり方なら、それでもいいと思う」 それだけ言うと、電車の時間するために携帯を出した。あと5分で電車がくる。 「あ、傘持ってく……」 来島に傘を貸そうとしたら、肩に手が乗った。 .
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