14人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
放課後、教室で少しの間しゃべっていると、眼鏡をかけた背の高い男子が薫を呼びにきた。
「小畑、今日、緊急招集だって」
「あ、大山くん」
大山直樹。
賢そうな細身の眼鏡に、きちんと着付けた制服。声は甘くてなかなか心地いい響き。
彼の顔を見て頬を赤らめた薫に、わたしたちはにやにやと意地の悪い笑顔を浮かべて、ヒューヒューとすでに死語である言葉を発する。
もおっ、と怒って真っ赤になった薫が可愛くて笑うと、大山直樹がきゅっと眼鏡の位置を直してこちらを見た。
一瞬カチ合った目線に、にこり微笑まれて、わたしも笑い返す。
「ごめんね、会議みたいだから、行くね」
薫は申し訳なさそうに眉を下げて、大山と連れ立って教室をあとにした。
それを見送ると、瑛子もあ、バスケ部の練習があるんだー、と言ってドーナッツをくわえながらさっさと教室を出て行ってしまった。
「あ、そーだ、椎奈のお見舞い行こっか。」
残された二人で教室を出ながら言うと、ゆうはそうだね、と頷いた。
二人で赤い日がさしこむ廊下を歩きながら、ちらりと隣を歩く彼女を見る。
ふわふわの巻き毛、くりくりの目を彩る長い睫毛。何度見てもかわいい。
「しょーじょ漫画の、王子様みたいな人、転がってないかなぁ」
はぁ、とため息を吐いて、ゆうはくるくると白い指に髪を絡めた。
「ゆうは理想が高すぎんのよー。この前告白してきた人はどうだったの?」
「あれは告白っていうか、そういうんじゃないよー」
ゆうはかわいい。可愛くて、明るくて、見た目はまるで砂糖菓子のようなふわふわの女の子だ。
若干中身と性格にギャップがあるんだけど、男の子の友達も少なくはないし、それなりに告白される回数も多かった。
本人はそれを鼻にかけるわけでもなく、またモテているという自覚もない。
彼氏がほしい、と言いながら、言い寄ってくる男をさらりと交して、わたしはモテないと嘆く。変わった子だなぁ、と思った。
最初のコメントを投稿しよう!