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下駄箱で靴を履き替えていると、昇降口の外でうろうろと何かを探しているような動きをしている男子生徒がいた。
植木を覗き込んだり、しゃがんで排水溝に目を凝らしたり。
「あれー、あきお、どうしたの」
ゆうが声をかけると、彼は振り返った。
「あ、…えっと、堺?」
クラスメイトの播井明生。アーモンド型の大きな目を少し細めてあきおはゆうを見た。
白い手拭を頭に巻いて、白い袴姿。
背は、春秋より少し小さいけれどすらっとして適度に筋肉のついた体はたくましい。
「探し物?」
ゆうの後ろからわたしも顔を出して言うと、ああうん、とあきおは曖昧に頷いた。
心なしか、不安げな顔をしている。
「なによ、どうかしたの?」
「うん、ちょっとな。何でも無いんだ。」
ほとんど表情の変わらないあきおが、少しだけ目元を歪めて苦笑した。
その顔にどこか違和感を覚える。いつものあきおと決定的に違う。
「あ。」
思わず声を上げたわたしに、ゆうが振り返った。
「あきお、眼鏡どうしたの」
そうだ、眼鏡だ。
銀のフレームの、どこか冷たい印象を与える細身の眼鏡。
あきおは極端な近眼で、視力強制器具がないとほとんど見えないんだと言っていた。
それなのにコンタクトを入れると頭痛が止まらなくなるから常に眼鏡をしている。
彼は剣道部で、部活のときに防具をかぶるから非常に邪魔なんだとか、話していたな。
「うん、落としたんだ…」
ひどく曖昧な笑みを浮かべるあきおは、なんだか少し疲れているように見えた。
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