第一章

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3人であきおの眼鏡を捜索したけれど、結局見つけることができなかった。 あきおは、もういいから、と言って剣道場へ戻ってしまったけど。 「なんで眼鏡なんてなくしたんだろうね。」 ゆうがくるくると髪の毛をいじりながら言った。 「そうだねぇ」 あきおは、クラスで一番しっかりしてるし、しかも眼鏡なんて大事なものを失くすとは思えない。 どこかやつれたような顔も気になった。 「あ、椎奈にお土産買ってこ!」 道すがら、いつも寄る雑貨屋を指差して、ゆうが言う。 うん、と頷いて、わたしたちは木製のかわいらしい扉を押した。 からん、とベルの音。 雑貨屋、というだけあって色んなものが置いてある。 ハンドメイドのお菓子だったり、小物だったり、小さいけれど家具も取り揃えている小さな店。 「今日は何がいいかなー、あ、これ可愛い」 ゆうがひょいと持ち上げたのは、アヒルのモチーフの小さなペンダント。 ピンクゴールドのアヒルと、小さな花がぶら下がっている。かわいい。 「いいんじゃない?」 わたしは椎奈が好きだと言っていたこの店の、小瓶に入ったジャムとクッキーを籠に放り込んだ。 「じゃ、あたしこれにしよ。あ、お揃いにしちゃおっかなー」 えへへーと笑いながら、ゆうは同じ形のペンダントをふたつ買ったようだった。 薄いピンク色の紙袋にジャムとクッキーを入れてもらい、小さなリボンもつけてもらう。 ゆうも軽くラッピングしてもらったペンダントを鞄に入れて、店を出た。 外に出ると、空はすでに闇が侵食してきていて、夕日の赤と夜の群青が徐々に混ざり合っている。 もうそろそろ日も暮れるな。風が強く吹いていた。
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