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「こんばんは、遅くにすみません。」
ゆうと2人で、ぺこりと頭を下げると、出迎えてくれたおばさんは嬉しそうに微笑んだ。
「いいのよ、あの子も喜ぶからいつでもきてね。」
椎奈の部屋まで案内されて、もう一度頭を下げて中に入る。
白で統一された部屋。大きな窓に、白いベッド。ふわふわしたまるで映画に出てくるお城の一室のようだ。
彼女は、大きなベッドの高く詰まれたクッションに背中を預けていた。
「椎奈、具合はどう?」
ゆうがベッドの側に用意された椅子に腰掛ける。
「うん、もう大分いいのよ」
にっこりと微笑んだのは、去年までクラスメイトだった石田椎奈。
漆黒の髪は腰まで長い。微笑んだ目元は少し垂れ気味で優しい。小作りな鼻と、薄桃色の唇。
白い頬にはほんのり赤みが差している。
元々病弱ということもあって、2年に上がってからはほとんど学校にこれなくなっているのだ。
「よかったー、これお土産。」
「これはわたしからね。」
「まぁ、いつもありがとう。」
ふたりで買ったものを渡すと、椎奈は壊れてしまいそうなほど淡い笑顔を浮かべる。
それにきゅんと胸が痛くなった。
「あ、かわいい」
取り出したアヒルモチーフのペンダントを嬉しそうに見つめる。
椎奈は、鳥が好きだ。空を自由に飛び回る彼らを見ているのが好きだと言って、いつも大きな窓から空を見上げていた。アヒルは飛べないけど。
お揃いなんだよーと、自分の首にかけた色違いのペンダントを見せるゆうに、椎奈は嬉しそうに微笑んだ。
「つけてもいいかな」
「うん、つけたげる。」
椎奈は背を向けて、ゆうがそっと白い項にチェーンを通してやる。
その微笑ましい光景を見ながら、ベッドに腰を下ろした。
うつむき加減で、小さく微笑んでいる椎奈の首筋は細くて折れてしまいそう。
「髪、ずいぶん伸びたね。」
さらりと流れる黒髪を撫でる。
「うん、そろそろ切らないとって思うんだけど」
「えー?勿体無いじゃん、せっかく綺麗なんだし。」
はい、できたっと椎奈の頭をくしゃりと撫でて、ゆうもベッドの端に腰かけた。
「似合う?」
「うん、可愛いよ。」
ペンダントトップを撫でて首をかしげる椎奈にうなずく。
にあうにあうーと、ゆうもはしゃいだ声を上げた。
「あ、ジャムとクッキー…」
そしてわたしの持ってきた袋を覗いて花がこぼれるような笑顔を浮かべる。
好きだったでしょ?と聞くと、椎奈は笑顔を深めた。
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