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薫は隣を歩く大山直樹を横目でちらりと見て、徐々に上がっていく心拍数をおさめるために小さく息を吐いた。
細身の眼鏡に、理知的な瞳。鼻筋は通っていて高い。
「小畑、今日一緒に帰ろうか」
不意に目線をこちらに投げて微笑む大山に、薫を飛び出しそうな胸をぐっとおさえた。
「え?あ、うん…」
かぁっと熱くなる頬を見られたくなくて、そっとうつむく。
その赤らんだ首筋や手首が可愛いな、と大山は思った。
「緊急召集って、何するんだろうね。」
精一杯、と言った風に言う薫に、ますます頬が緩む。
明るい色の髪は肩口で切り揃えられていて、さらりとゆれた。
「さぁ、会長のことだから、またとんでもないことを言い出しそうだけど」
苦笑すると、薫もそうね、と微笑んだ。
田中亜也は、本当に考え付かないようなことを言い出す男だ。
無理だと思われるような事例ですら、田中がやると言ったら実現する。
会長に就任してすぐに、彼は唐突に言った。
「十月三十一日はハロウィンってことで、コスプレパーティーしようぜ。」
唖然とする生徒会役員の前で、まるで天気がいいから野球でもしようというように、あっさりと。
これ読んで意見を言え、と放られた冊子には、まるで完璧としか言いようのない企画がびっしりと書き込まれていた。
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