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三本目のオレンジジュースを手に取り、パッケージに唇を寄せた
最後のオレンジジュース
三年間
私を桜と共に癒やし続けてくれた
愛しいモノ
これが飲み終わったら、ココとのお別れ
飲み終わりたい
飲み終わりたくない
この静かな葛藤が心の中で小さく繰り返される
私は
目を閉じて
満開の桜を強く想像し直す。
さようなら
私は行くよ
青空を見上げ
心の中で気合いを入れる
ごくごくと勢い良く飲み干し
ぐしゃっと握る
「さようなら。桜、オレンジジュース」
前に進んでいくよ
想像の中の桜とオレンジジュースに
にこりと微笑む
私は屋上のドアノブを回した
これは未来への扉
胸がきっと躍る未来へ
さようなら
過去
はじめまして
未来
バタン
錆びた無機質な音が
青空に響いた
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