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「洋~。また勉強してるの?一昨日私立受験が終わったばっかりなのに」
隣の席で頬杖をついて、真っすぐな目で俺を見てくる。
更紗はくるくるとシャープペンを起用に回していた。
「公立まであと二週間切ったんだぞ。おまえの方が呑気だろ」
「そんなことないよ。ちゃんと勉強してるから」
ほら、と言って英語のテキストを見せてくる。
関係代名詞。
「ね?洋がやりすぎなだけだと思うんだけど」
そんなことない。
第一、今の俺の実力では第一志望校に受からない。
更紗はつくづくお気楽な奴だ。
「でね、ここが分からないんだけど…」
そう言って、指差した問題。
俺にとっては何にも苦にならないようなものだった。
「ほら。貸してみろ。ここに動詞が来てるだろ?だから……」
一つずつ丁寧に説明してやる。
更紗は俺の声に耳を傾けながら、一生懸命問題とにらめっこしている。
「あ!分かった~。なるほどね。ありがとう、洋」
更紗は、ぱっと笑って言った。
何て単細胞なんだ。
………そんなのに惚れてる俺も俺だが。
仕方ない。
いつのまにか好きで、いつのまにか大事だったんだから。
「洋、本当に頭がいいね!」
更紗が俺の名前を呼ぶたびに、幸せを感じている。
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