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長い。
異常なほど長い時間が流れている。
俺は、両手を握りしめて額に強く押し付けていた。
由美は半泣きで正紀にすがっている。
更紗の両親はICUに入ることを許された。
すると、病室の扉が開いた。
「洋君…更紗が…」
更紗の母親は、泣きながらそう言った。
俺は正紀と由美を見る。
二人は見てこい。行ってこいと目で訴えてくる。
「入って…いいんですか?」
俺が尋ねると、後から出てきた更紗の父親が首を縦に振った。
更紗の両親は病室から出て、代わりに俺が入る。
病室の中は、嫌な音が鳴っていた。
更紗の呼吸を知らせる音。
あれが消えた時―――
「さらさ…」
更紗の状態はひどかった。
だが、俺は目を背けてはいけない。
見るんだ。
由美も正紀も許されなかった。
更紗の顔色は青く、呼吸も荒い。
「………ぅ…」
喘ぎか、呼吸か。
更紗は僅かに唇を動かした。
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