15人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
更紗の両親から渡されたのは、いつもあいつが首から下げていた水晶。
握れば、冷たい。
それは最期の更紗の唇を思い出させる。
「洋、大丈夫か?」
「何がだ?」
正紀が尋ねてくるが、あまり興味が湧かない。
俺の精神はそれほど限界と言うことか。
自分でも、自覚してる。
本当は更紗の後を追いたいと思っている。
それでも辛いのは俺だけじゃないってもの、分かってる。
現に、由美もかなり参ってる。
正紀だって、辛くないわけない。きっと俺がこんなんだから、どうしようもないのだろう。
俺は手のひらに握られているものを見る。
桜の、ネックレス。
本当だったら、既に更紗の物になっているはずだったのに。
「どうして…」
神様は残酷だ。
俺達の大切なモノを奪って。
大事なモノを灰にして。
俺の太陽を、消したんだ。
光りを消したんだ。
生きていけるのか。
光りを失った世界で俺は。
手探りで、この先の一生を生きていくのか。
最初のコメントを投稿しよう!