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更紗への手紙は全て、桜の便箋につづってあった。
『更紗へ。更紗はいつでも私を助けてくれたね』
そうだ。
いつだって、笑ってみんなを支えてくれて。
『誰よりも、優しい人になるって言っていたよね』
弱い者の立場にならなければ駄目だと。
誰にでも、手を差し延べてやると。
『どんな時でも、凛々しく雄々しい。更紗は女性としても、人間としても立派な人だったね』
更紗は凛としていた。
先輩の前でも、同級生の前でも、後輩の前でも。
何にも劣らない。
そんな空気。
『更紗の言葉はいつも私の心を癒してくれたね。勇気をくれたね』
そうだ―――
どうして気付かなかったのだろう。
更紗はこんなにもみんなの中心に居た。
だが、更紗の心は誰が支えた?
あんなにも強かった笑顔は、言葉はどこから来ていた?
全ての苦痛を背負って。
更紗は――――――
「ごめん……」
桜の上に、涙が落ちる。
俺が、支えてやらなければいけなかったのに。
強い人間は、それだけ脆いのに。
知っていて、知らないフリをしていた。
ごめん。
本当にごめん。
もっと、解ってやればよかった。
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