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5時過ぎになると公園には、人がほとんどいなくなる。あんなに公園に響いてた子供の声は、もう聞こえない。そんななか、野球している女の子が一人淋しくそこにいた。敬太は、そのこに一言声をかける。
「野球教えようか?」
女の子が振り返って、敬太の方をみた。
「たしか、一組の……。」
「鹿嶋(かじま)。敬太って呼んで。懐かしいなここ。中学入ってからこれなくなっちゃって。俺もここで投げたなあー」
いきなり語り出す敬太に真希は慌てる。その様子を見ていた敬太はいきなり、真希がにぎりしめているボールを強引に奪った!
「!?ちょっと何す」
「みてな。今からあそこにボールを当てる。」
そういいながら、敬太は何メートルも先にあるすべりだいを指でさした。真希はびっくりする。いきなり声をかけられ、なんだと思えば、自分から一方的にしゃべり始め、こんな遠い距離からボールを物に当てようなんてバカげてる。何いってんの?「な」の字をいおうとしたが…。もう彼は、かまえのフォームだった。とてもキレイにボールを滑らせる姿にうっとりみとれてしまう真希。そしてカーンと響くすべりだい…。真希は敬太に笑いかけた。
「私は真希。野球教えてよね。敬太くん。」
「俺をなめんなよ。だてに六年野球やってねえから。」
そういってから、お互い汚い手で握手したのだった。
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