プロローグ

17/17
前へ
/69ページ
次へ
 店の外に出た恭介は周りを見渡す。すると店の先にある自販機の前で恵梨が待っていた。  恭介はそれを見ると恵梨の方に歩き出す。  冷たい風が吹く。季節は真冬。恵梨は缶コーヒーを両手で包み肩を震わせていた。  店の中では巻いていなかった黒いマフラーが口元を隠している。 「ごめん恵梨。待った?」 「ううん。全然待ってないよ」  恵梨はそう言うものの既に30分は経過している。真冬の夜空の下で30分も待っていた恵梨の頬は真っ赤だった。 「寒かったろ?」 「そんなことないよ」  恵梨は笑ってみせる。 「嘘つけ……ほら、身体冷てえじゃねえか」  恭介は恵梨を抱きしめる。 「うん、ホントはちょっと寒かったかな?」  暖かい、そう言って恵梨は恭介に身体を預ける。 「ありがとな、恵梨のおかげで店長に褒められてたんだ」 「そうなんだぁ、よかったね!」 「あぁ、それじゃどっか行くか」 「うん!」  二人は身を寄せ合い夜の街へと消えて行った。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

453人が本棚に入れています
本棚に追加