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(んで、その校長的なじいさんにも待っとれ、って言われたんだっけ?)
「そうだ!その後……」
恭介は大きな声を上げる。それと同時に少女はびっくりしたのかビクッと肩を揺らし目を強くつむった。
(待ってたらいきなりこいつが……)
『綺麗な顔してる新人さんを発見です!』
(とかなんとか言っていきなりこの保健室みてぇな所につれて来られたんだ)
(それでいきなり止まりやがって俺がバランスを崩してこいつを押し倒したらこんな事になっちまったって訳だ)
恭介は加害者ではなく被害者だったのだ。
「……あのぉ」
少女はつぶらな瞳を恭介に向ける。
「あ?」
「その、……しないんですか?」
「何を?」
「えっと……。えっちぃ事です」
「はぁ?」
恭介は口をあんぐりと開き聞き返す。
大胆な発言をした本人はと言うと、顔を真っ赤にしてプルプル震えながら、小声で何かを言っていた。
「大丈夫、怖くない。ママが言ってたもん。気持ちいいって……それに男の人に押し倒されたら覚悟を決めなさいって……」
恭介はそれを聞いてようやく立ち上がった、決して性的な意味ではない。
「なぁ、なんで俺をここに連れて来たんだ?」
無視する方向で恭介は前へと進んだ。
「へ?……あっ、私、落合日向(おちあいひなた)です!よろしくです」
えへへ、笑う日向。
恭介は思った。
(駄目だ。会話になってねぇ)
「あぁ、俺は霧山恭介。よろしくな」
が、しかし。恭介は大人だった。とりあえず挨拶を済ましておこうと返事をきっちり返した。
「はい。恭介さんですね?ちくわさんって呼んでもいいですか?」
「は?」
(ちくわぁぁあ!?)
マジで意味わかんねーと恭介はがっくりとうなだれた。
「お兄ちゃんちくわ!……あれ?私何言ってるんだろ?」
その頃、勉強の予習をやっている真理が突然呟いた言葉だった。
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