プロローグ

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 彼、恭介は荒れていた。  理由を簡潔に述べれば、両親が亡くなったからである。  生前、恭介の両親は共働きで、幼少時から余り恭介に構ってやれる事は少なかった。  その為、恭介は自暴自棄に陥り族や不良、とにかくそちら側の者を片っ端から潰して回ったりと凄い行動を取っていたのだ。  しかし、最近になり両親の仕事が落ち着き、やっと家族の時間、スキンシップや身内話ができるようになっていたのに、母と父は他界。  恭介と妹である真理を残して逝ってしまったのだ。  妹、真理は泣きじゃくり兄である恭介は真理の手前、泣く事は出来ず、ただ顔をしかめて涙腺を強くはっていた。  そして、親族の引取を断り、自分が真理を養うと決めたのだ。  両親は、貯金は愚か生命保険すら入っていなく、お金は全くなかった。  そこで、恭介は働く事を決意し、高校を中退したのだ。  とりあえずバイトから、と手当たり次第に面接を受けたりしたのだが全て惨敗した。  何故なら、恭介は死ぬ程、頭が悪い。足し算はできても掛け算や割り算、引き算も全くできない。  しかも、物事を一分しか考えられないといった致命傷があるのだ。  そんな彼を雇う場所は無く、日雇いの肉体労働をしているだけで、余りお金はない。その少ないお金で真理が上手くやりくりをしているのだ。  恭介は真理に苦しい思いをさせている、と自己嫌悪を感じ、そして自分の頭の悪さに腹立ち、両親が死んだというやり場のない気持ちから、街中でチンピラを見かけては殴り倒していたのである。
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