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「ったく。んで、話はなんだ?」
真昼間というのにここ、路地裏は薄暗い。二、三歩で端から端まで辿り着けるぐらいの細さを保ち奥に道が延びている。
ごみ箱が倒れ腐った生ものが散乱しているせいか酷い腐臭が辺りを漂っている。
壁は黒く汚れ、道端には煙草の吸い殻が何本も目につく。
そんな汚い路地裏に、かなり顔が整った黒髪の青年と、黒髪の青年には劣るが中々、整った顔を持つ金髪の少年が立っていた。
「これ、どうぞ」
金髪の少年、テツが恭介に汚れた封筒を渡す。何か入っているのか物凄く膨れている。
彼、テツは本名、郷上 哲也(ゴウカミ テツヤ)。テツとは彼の愛称である。テツはかつて総員1000人を越える暴走族「荒羅斗」の族長、霧山 恭介の右腕をやってのけた男だ。歳は17とまだ若い。
恭介が封筒を開けると凄い勢いでテツを見た。
「テツ!んだよこの金は!?」
封筒の中身は万札の束。札束であった。見る限り、百万は軽く超している。
恭介は怒声を上げると共に、テツの胸元を持ち上げる。
テツの体は空に持ち上げられ、恭介の腕によって浮かんでいた。
「ちょっ、族長!落ち着いて下さい!俺は食っても上手くないですよ!?」
「誰が食うか!」
「ちょっ!揺らさないで!」
「いいからこの金が何なのか言えっつってんだ!」
恭介はそう叫ぶとテツを持ち上げた腕を揺らしに揺らす。
「こっ、この金は族長を慕う皆からカンパしてもらって集めたんですよ!最近、苦しいってしってましたから!」
「なっ!」
恭介は驚いたのか、テツを支えていた手を離す。
ズシャッとテツが落ちる音が路地に響く。
「おっ、お前……んな事しなくたって。俺なんかの為に……」
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