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「あっちーな」
夏服の執事服のベストを脱ぎ捨てる恭介。
恭介が執事になってから約半年、季節は既に夏に入っていた。
「ちょっと、その服高いんだから乱暴に扱わないでよ」
「うっせーな、お前は母さんか」
眉間にしわを寄せながら悪態づく。
「むー」
溜息を吐き出すとお嬢様はベストを拾い、たたむ。
「あっ、そういえば明日からアンタの妹夏休みよね?んむっ」
お嬢様の唇に指を当てる。
「アンタじゃねえぞ?」
普段からは想像もつかない笑みを浮かべる。
その笑みを向けられたお嬢様は一瞬にして顔を赤くした。
「う、うるさい!」
既に何回もしたやり取り。この笑みを向けられたいが為に、わざと言ってるのを彼は知らないだろう。
あの事件以来、どうも恭介の事が気になって仕方がない。
今まで恋などした事がなかった渚は気持ちの正体がわからない。
ただ、二人の間に絆が出来始めているのは誰から見てもわかる事である。
二人の間に若干ではあるが良い雰囲気が流れ始めた。
その時、部屋の扉がノックされた。
「入って」
「失礼します。お嬢様、美咲お嬢様がお見えになっております」
現れたのはエアークラッシャー、クリウスであった。
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